
停留精巣(睾丸)について
停留精巣って何?
お母さんのお腹の中にいる胎児の時代、精巣(睾丸)は腎臓の直下に造られます。完成した精巣は少しずつ陰嚢 に向かって下降し、お誕生のころには陰嚢内に収まります。出生までに下降が完成せず、誕生後も途中に留まっている のが「停留精巣(睾丸)」です。出生時に精巣が陰嚢内に収まっていない赤ちゃんは 5%程度といわれています (そのうち両側とも下降していない例は4割ほどです)。1 歳になっても陰嚢内に収まらない例は1.5%ほどです。
どんな問題があるの?
停留精巣は死に至るようなものではありませんが、将来不妊症や癌になりやすいといわれています。 不妊症については、片側の停留精巣のばあいは50%に精液の異常がみられ、両側の停留精巣の場合は90%といわれており、 手術により将来不妊となる確率は下がります。癌になる確率はよくわかっていませんが、正常精巣の場合の4~5倍の頻度 といわれています。
停留精巣の治療は?
出生時に停留精巣の状態であっても、生後3か月までにほとんどの例で陰嚢内に下降します。逆に言うと、 1歳以降も経過観察を続けても下降する可能性は少ないことが分かってきました。このような事実から、以前は5才くらいま でに手術をすれば良いとされていましたが、現在の手術時期はもっと早まっています。2歳までに手術を行った場合は、 将来不妊となる確率は10%程度と言われますが、3~4歳での手術では 50%、9~12歳での手術では90%となります。 したがって最近は停留精巣の手術は、1~2才の間に行うことが望ましいと考えられています。
その他には?
なお、気になる症状として「移動精巣」があります。寒いときは陰嚢内に精巣を触れないが、お風呂に入った後などは 陰嚢内に正常の大きさの精巣を触れる場合を移動精巣と呼びます。これは精巣は暖いと下がり、寒いと上がるという 性質があるためです。入浴後正常の大きさの精巣を陰嚢内に触れる場合は、原則として経過観察で良いでしょう。 ただし、年長学童期になっても精巣が陰嚢内に常時下降しない場合は、その時点で手術するか判断することになります。